1.対象の概要(入門知識)
人的リスクとは、組織に所属する「人」に起因して発生するリスク全般を指します。従業員の不注意やスキル不足、健康問題、モチベーション低下、さらには不正行為や人間関係トラブルまで幅広く含みます。企業活動の根幹は「人」によって支えられており、人的リスクはあらゆる組織にとって回避不能の課題です。
1-1.主な分類
| リスク・ロス | 内容 |
| ヒューマンエラーリスク RL-380 | 操作ミス、判断ミス、不注意など。 |
| スキル・知識不足リスク RL-037 | 必要スキルや経験不足による業務遂行不能。 |
| 健康・メンタルヘルスリスク RL-038 | 体調不良やメンタル不調による欠勤や生産性低下。 |
| 人間関係トラブルリスク RL-039 | 対立やハラスメントによるチーム機能不全。 |
| 離職・人材流出リスク RL-040 | 優秀人材の流出による業務停滞やノウハウ喪失。 |
| モチベーション低下リスク RL-041 | 評価制度や組織不満による意欲低下。 |
| 非倫理的行動リスク RL-042 | 不正行為・情報漏洩・コンプライアンス違反。 |
| 指示伝達・認識齟齬リスク RL-043 | コミュニケーション不足による誤業務遂行。 |
1-2.樹形図
2.ケーススタディ
ある製造業の現場では、新人オペレーターが設備の操作手順を誤り、製品の大量不良が発生しました。教育不足とマニュアルの曖昧さが背景にあり、直接的な損失だけでなく、納期遅延による顧客の信頼低下を招きました。
一方、別の部門ではベテラン社員が過労により体調を崩し、重要なプロジェクトの進行が大幅に遅延。さらに、上司と部下の認識齟齬による指示ミスが重なり、現場は混乱状態に。
これらの事例から分かるように、人的リスクは単発的な問題ではなく、組織全体に波及する深刻な影響をもたらします。
3.主なプロセス(流れ)
発生要因(不注意、過重労働、教育不足、組織文化)
リスク顕在化(操作ミス、不正行為、健康不良、離職)
直接的影響(業務停止、品質低下、納期遅延)
二次的影響(顧客信頼の喪失、ブランド価値の毀損、人材流出)
長期的影響(収益減少、組織の持続可能性低下)
4.トラブルや被害
4-1.トラブルや被害(一次被害)
設備誤操作による生産停止
情報漏洩による顧客・取引先への損害
欠勤・離職による業務停滞
ハラスメント問題による訴訟・社会的信用低下
4-2.トラブルや被害(二次被害)
顧客信頼の失墜、取引停止
採用コスト・教育コストの増加
ブランド・企業イメージの毀損
長期的な収益悪化と競争力低下
5.要因(なぜ起きるのか?)
教育不足:マニュアルが不十分、研修体制の不備。
労働環境の悪化:過重労働、ワークライフバランスの欠如。
組織文化:報告しにくい雰囲気、トップダウン型の一方通行指示。
人員不足:即戦力を求めすぎ、新人や未経験者の比率が高い。
内部統制不備:権限管理・チェック体制が甘く、不正を許容。
心理的要因:モチベーション低下、ストレス増大、メンタル不調。
