人的リスク RL-014

1.対象の概要(入門知識)

人的リスクとは、組織に所属する「人」に起因して発生するリスク全般を指します。従業員の不注意やスキル不足、健康問題、モチベーション低下、さらには不正行為や人間関係トラブルまで幅広く含みます。企業活動の根幹は「人」によって支えられており、人的リスクはあらゆる組織にとって回避不能の課題です。

1-1.主な分類

    リスク・ロス内容
    ヒューマンエラーリスク RL-380操作ミス、判断ミス、不注意など。
    スキル・知識不足リスク RL-037必要スキルや経験不足による業務遂行不能。
    健康・メンタルヘルスリスク RL-038体調不良やメンタル不調による欠勤や生産性低下。
    人間関係トラブルリスク RL-039対立やハラスメントによるチーム機能不全。
    離職・人材流出リスク RL-040優秀人材の流出による業務停滞やノウハウ喪失。
    モチベーション低下リスク RL-041評価制度や組織不満による意欲低下。
    非倫理的行動リスク RL-042不正行為・情報漏洩・コンプライアンス違反。
    指示伝達・認識齟齬リスク RL-043コミュニケーション不足による誤業務遂行。

    1-2.樹形図

    2.ケーススタディ

    Case2508-***

    ある製造業の現場では、新人オペレーターが設備の操作手順を誤り、製品の大量不良が発生しました。教育不足とマニュアルの曖昧さが背景にあり、直接的な損失だけでなく、納期遅延による顧客の信頼低下を招きました。
    一方、別の部門ではベテラン社員が過労により体調を崩し、重要なプロジェクトの進行が大幅に遅延。さらに、上司と部下の認識齟齬による指示ミスが重なり、現場は混乱状態に。
    これらの事例から分かるように、人的リスクは単発的な問題ではなく、組織全体に波及する深刻な影響をもたらします。

    3.主なプロセス(流れ)

    発生要因(不注意、過重労働、教育不足、組織文化)

    リスク顕在化(操作ミス、不正行為、健康不良、離職)

    直接的影響(業務停止、品質低下、納期遅延)

    二次的影響(顧客信頼の喪失、ブランド価値の毀損、人材流出)

    長期的影響(収益減少、組織の持続可能性低下)

    4.トラブルや被害

    4-1.トラブルや被害(一次被害)

    設備誤操作による生産停止

    情報漏洩による顧客・取引先への損害

    欠勤・離職による業務停滞

    ハラスメント問題による訴訟・社会的信用低下

    4-2.トラブルや被害(二次被害)

    顧客信頼の失墜、取引停止

    採用コスト・教育コストの増加

    ブランド・企業イメージの毀損

    長期的な収益悪化と競争力低下

    5.要因(なぜ起きるのか?)

    教育不足:マニュアルが不十分、研修体制の不備。

    労働環境の悪化:過重労働、ワークライフバランスの欠如。

    組織文化:報告しにくい雰囲気、トップダウン型の一方通行指示。

    人員不足:即戦力を求めすぎ、新人や未経験者の比率が高い。

    内部統制不備:権限管理・チェック体制が甘く、不正を許容。

    心理的要因:モチベーション低下、ストレス増大、メンタル不調。