法的・コンプライアンスリスク RL-005

1.対象の概要(入門知識)

法的・コンプライアンスリスクとは、企業が法律・規制・契約・社内規程などを遵守しなかった場合に発生するリスクを指す。罰金や行政処分といった直接的損害だけでなく、社会的信用の失墜や業務停止といった深刻な影響をもたらす。

1-1.主な分類

    リスク・ロス内容
    法令違反 RL-044労働法・個人情報保護法・独占禁止法などの違反
    契約違反・未履行 RL-045契約条項不履行や履行遅延
    知的財産侵害 RL-046特許・商標・著作権侵害
    倫理・規範逸脱 RL-047不正会計・利益相反・過剰接待など
    社内規程違反 RL-048就業規則やコンプライアンス規程の逸脱
    海外規制対応不備 RL-049GDPR、輸出入規制、現地法対応不足
    内部通報・告発対応不備 RL-050内部告発への不適切対応
    反社会的勢力との関与 RL-051暴力団・フロント企業との関与

    1-2.概要図

    法的・コンプライアンスリスク
    ├─ 法令違反
    ├─ 契約違反
    ├─ 知財侵害
    ├─ 倫理・規範逸脱
    ├─ 社内規程違反
    ├─ 海外規制対応不備
    ├─ 内部通報対応不備
    └─ 反社会的勢力関与

    2.ケーススタディ

    Case2508-***

    ある中堅メーカーは、新製品を海外に輸出する際、現地の輸入規制を十分に確認せず出荷を開始した。
    結果、現地当局から輸入差し止めと罰金を科され、数億円規模の損失が発生。ニュースでも大きく取り上げられ、企業イメージは大きく失墜した。
    さらに内部調査の結果、社内マニュアルが古いまま放置され、現地法改正に対応していなかったことが判明。経営陣はガバナンス不足を指摘され、株価下落にもつながった。

    3.主なプロセス(流れ)

    法令・規制・契約に基づく義務発生

    社内での管理・運用(規程・手続き)

    遵守不備・違反の発生

    行政処分・訴訟・社会的非難

    金銭的損害・信用失墜・業務停止

    4.トラブルや被害

    4-1.トラブルや被害(一次被害)

    行政処分、罰金、課徴金

    契約解除や損害賠償請求

    特許訴訟や販売差し止め

    内部処分(懲戒・降格・解雇)

    4-2.トラブルや被害(二次被害)

    企業イメージの悪化、ブランド価値毀損

    株価下落や投資家からの不信

    取引先からの契約解除・新規契約減少

    優秀人材の流出、採用難

    5.要因(なぜ起きるのか?)

    法令・規制への理解不足、改正情報の未把握

    契約書・規程類の確認不足、属人的対応

    ガバナンス・内部統制の不備

    内部監査やチェック体制の弱さ

    海外展開時の現地法規制への対応不足

    倫理観・コンプライアンス意識の低下

    内部告発制度が形骸化し、早期発見が困難