可用性リスク RL-015

1.対象の概要(入門知識)

可用性リスクとは、ITシステムやサービスが必要な時に利用できなくなるリスクを指す。
可用性(Availability)は情報セキュリティの三大要素(CIA:機密性・完全性・可用性)の一つであり、システム障害や攻撃、環境要因によって業務が停止することは、直接的な売上損失や信用低下につながる。

1-1.主な分類

リスク・ロス内容
サーバーダウン RL-121ハードウェア障害やソフトウェア不具合による停止。
ネットワーク障害 RL-122インターネットや社内ネットワーク断絶。
電源障害 RL-123停電やUPSトラブルによる利用停止。
DDoS攻撃 RL-124外部からの大量通信による業務停止。
クラウドサービス障害 RL-125AWSやGoogle Cloudなどの停止。
ハードウェア故障 RL-126物理機器の故障。
バックアップ失敗 RL-127障害時に復旧できない。
システムアップデート失敗 RL-128更新時の不具合によるダウン。
過負荷による停止 RL-129アクセス集中や処理能力不足。
冗長性不足 RL-130)単一障害点が全体停止を招く。

1-2. 概要図

中央に「不正アクセスリスク」

周囲に 10分類を配置(攻撃手法ごとに色分け:技術的攻撃/人間心理利用/内部要因)

外周に「情報漏洩」「データ改ざん」「業務停止」「信用失墜」を配置し矢印で接続

2.ケーススタディ

Case2508-***

あるECサイトでは、セール開始日にアクセスが集中し、サーバーが過負荷でダウンした。
顧客は商品をカートに入れられず、SNSでは「買えない」「信頼できない」と批判が拡散。
さらに、バックアップ環境が不十分だったため復旧に丸一日を要した。その間に競合他社に顧客を奪われ、売上は大幅に減少した。
「アクセス増加は嬉しいこと」のはずが、結果的には企業ブランドを傷つける事態となった。

3.主なプロセス(流れ)

潜在的要因(負荷増大・障害・攻撃)

サービスの停止/低下(応答不能、遅延)

業務影響(取引不能、社内作業停止)

顧客影響(不満・離反・SNS拡散)

信用失墜・経済的損失

4.トラブルや被害

4-1.トラブルや被害(一次被害)

サービス停止・業務システムダウン

データ復旧不能

顧客がサービスを利用できない

4-2.トラブルや被害(二次被害)

売上損失・契約違反による賠償

顧客満足度低下、競合他社への流出

マスコミやSNSでの炎上、信用失墜

冗長化・セキュリティ強化のための追加投資

5.要因(なぜ起きるのか?)

技術的要因:システム脆弱性、性能不足、冗長性の欠如

運用要因:監視不足、更新時の不備、障害検知の遅れ

外部要因:自然災害、停電、クラウド事業者の障害

攻撃要因:DDoS攻撃、標的型攻撃

組織要因:投資不足、リスク軽視、バックアップ体制の不備